国会において婚姻に伴う改姓の課題解消に向けた議論を求める意見書の柳の個人的な見解について

2024年(令和6年)12月19日の令和6年第四回定例会最終日に浦安市議会で可決された 国会において婚姻に伴う改姓の課題解消に向けた議論を求める意見書について問い合わせがありましたため、私の見解を記しておきたいと思います。
結論から先に書きますと、私は、後程の統計資料や課題点を総合的に判断して、選択的夫婦別姓については慎重な対応を求める立場です。
【意見書とは】
地方自治法第99条は、地方公共団体の議会が、公益に関する事柄について意見書を国会や関係行政庁に提出できることを規定しています。
意見書は、議員が所定の賛成者とともに発案し、本会議で議決された後に議長名で提出されます。意見書は、住民の意見や要望を国政に届ける重要な手段として活用されています。今回、住民要望が端緒となり、意見書がまとめられました。尚、提出者が自身であるのは、副議長の役職者のためとなります。
以下、太字が提出した意見書となります。
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国会において婚姻に伴う改姓の課題解消に向けた議論を求める意見書
我が国においては、明治31(1898)年に制定された旧民法で「家制度」が導入され、妻は夫の家に入り、夫婦は同じ家の名字にする制度となった。そこから戦後の民法改正で、夫婦は夫か妻のいずれかの名字を選べるようになったものの、夫婦は同じ名字にするという仕組みはそのまま引き継がれている。
昨今の女性の社会進出ならびに男女共同参画の流れの中、住民票、パスポート、マイナンバーカードなど旧姓表記を認める公的書類が広がる一方で、海外では通用しないなどの事例もあり、現行制度の課題として、労使ともに不利益が指摘されている。また、家名継承にも、依然として課題が残っている。司法の場では平成27年の最高裁判決に続き、令和3年6月の最高裁決定においても、夫婦同姓規定が合憲とされる一方、夫婦の氏に関する制度の在り方については「国会で論ぜられ、判断されるべき」とされたところである。
以上のような状況を鑑み国においては、現行制度により不利益を被っている状況を十分に調査し、様々な角度から議論を進め、適切な法制化を行うよう求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
【浦安市議会内の状況】について
本件については、まず婚姻に伴う改姓の課題解消に向けた議論を求める意見書であり、選択的夫婦別姓の推進を浦安市議会として一致して求めるものではないことを、まず前提として記述したいと思います。
議員の中には、選択的夫婦別姓を求める議員もいますが、私は、後程の統計資料や課題点を総合的に判断して、選択夫婦別姓については慎重な対応を求める立場です。婚姻する人すべてにかかわることがらであり、色々な資料を見て、このまま国民的な合意が無いまま進むのは後で禍根が残ると思います。
本意見書については、浦安市議会内において、夫婦別姓を志向する立場の議員と、通称使用の拡大について求める立場の議員間でのやりとりの中、国会にて婚姻に伴う改姓の課題解消に向けた議論を求める、といった合意点を見た内容となります。
【三種類の方向性】について
1、戸籍上も社会生活上も夫婦親子同姓が好ましい
2、戸籍上も夫婦別姓を選択できるようにする。その場合、子どもの姓の在り方はどうあるべきか定まっていない。
3、1案と2案の中間の通称使用の拡大:戸籍上は夫婦親子が同姓であるという現行法で対応。家族のファミリーネームは残すべきである。ただし、職場等での通称として旧姓使用を希望する届出をした場合には、各行政機関や民間企業等は通称使用の利便性に配慮するよう法整備を行う。
婚姻に伴う改姓の議論の中では、主に上記、3種類の意見が有るかと思います(三種類をさらに細分化した併用も考慮される)。自身としては、戸籍上も社会生活上も夫婦親子同姓といった点には課題があることは理解するため、折衷案としての3番目の案が妥当ではないかと考えます。選択夫婦別姓については、内閣府の調査でも制度導入に賛成なのは約3割で、世論の合意が形成できていない状況であると考えます。
【世論調査の結果】について
様々なメディア媒体が調査を行っていますが、選択肢の作り方が二者択一であることを踏まえると、「条件付きの賛否」が設問に含まれていないことが多いです。そのため内閣府世論調査及び、それを基に作成した法務省民事局が作成した資料が一番正確な数字ではないかと思います。
内容としては令和4年3月に内閣府が公表した「家族の法制に関する世論調査」によると、「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」と答えた人が42.2%に上っています。また「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した方がよい」と答えた人は27.0%、「選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい」と答えた人は28.9%となっており、選択的夫婦別姓の導入は、国民的世論の一致した賛成を得ているとは言えないと考えます。
【自身が考える課題点 概要】について
➀子どもの姓の取り扱い
夫婦は別姓を望んだとしても、生まれてくる子供は、両親のどちらの姓になるかを選べない点が課題と感じます。片方の親とは必然的に別姓になる。いろいろな考え方がありますが、平成8年の法制審議会では、結婚の際に、あらかじめ子どもが名乗るべき氏を決めておくという考え方が採用されており、子どもが複数いるときは、子どもは全員同じ氏を名乗ることとされています。
しかしながら、令和3年に実施された内閣府の世論調査では、夫婦の姓が異なることでの子供への影響について、「好ましくない影響がある」と答えた割合は69・0%に上っており、その理由で最も多かったのが「親と姓が異なると指摘されるなど、対人関係で心理的負担が生じる」で78・6%であり、やはりその点は慎重に考えなくてはいけない論点といえます。
あくまで文化的な事柄かもしれませんが、結婚の際に、あらかじめ子どもが名乗るべき氏を決めておくというのは、今の世の中、ただでさえ結婚へのハードルが高いのに、さらにハードルを上げかねないと感じます。さらに、結婚する際に両父母へ意見を求めることが多い日本で、かなり難しい判断を行うこととなります。
また別姓夫婦が結婚時に生まれてくる子の姓を事前に決めておく案については、決められなかった場合は婚姻届が出せず、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」と定めた憲法24条に違反するおそれがあります。
その他、平成22年旧民主党案では
「出生」時に父母の協議で決める。
協議が調わないときは、家庭裁判所が定める。
子の姓は、兄弟姉妹間で異なってもよい。
別姓夫婦の子は、「家庭裁判所の許可」を得て、姓の変更が可能。
との案が示されてますが、極めて慎重に制度設計しないといけない案と感じます。
なお現行の戸籍法では出生後14日以内に氏名を届け出なければならないため、夫婦間の協議が整わない場合を想定する必要があり、暫定の処置を考慮する必要もあります。旧民主党案としては、家庭裁判所が定める、とあるが裁判官もガイドラインやルールが無いと困るのではないかと思います。
※ 戸籍法第49条では、出生届は出生日から14日以内に提出する必要があると定められています。
➁旧姓の通称使用の法制度について
通称使用について国際的な理解を求めることや、また旧姓の通称使用が法律に基づいていないため、中小の企業では通称使用を認めていないところがあり、公益団体の資格や金融機関の口座開設などでは旧姓併記ができないケースもみられます。世論調査において、「旧姓の通称使用の法制度」を設ける声が最も多かったのは、こうした現状を反映していく必要があるためと思われます。自身としてはこういった課題点について対応はしていく必要があろうかと思いますし、国会で議論を求める部分です。
【司法の判断】について
現在の民法のもとでは、結婚に際して、男性又は女性のいずれか一方が、必ず氏を改めなければなりませんが、夫婦同氏制度が憲法に違反しているのではないかが争われた裁判で、最高裁判所大法廷は、平成27年(判決)と令和3年(決定)の2度にわたり、夫婦同氏制度は憲法に違反していないと判断しました。
もっとも、これらの最高裁判所大法廷の判断は、夫婦の氏に関する制度の在り方は、「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないというべきである」と判示しています。
【まとめ】
夫婦の氏に関する制度の在り方は、「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないというべきである」と判示されており、地方議会では当然議論できないこととなります。
そのため、時代の変化による改姓による社会生活上の不利益を解消する等、政府及び国会は、婚姻に伴う改姓の課題解消に向けた議論を将来に禍根を残さない形で求めたいです。
2025年02月01日
柳 毅一郎