憲法についての考察

最近は極力難しいことを書かないようにしておりますが、憲法をテーマに書いてほしいとの依頼があり考えていたことを書きましたので自身のホームページで紹介したいと思います。

自身が所属する政党「日本のこころ」は平成29年4月27日、施行70年を迎える日本国憲法に対し対案たる自主憲法草案を発表しました。その内容は、「主権と独立を守り、国際的な平和活動に協力するため、軍を保持する」とし、天皇については「日本国の元首」と明確に位置づけています。
本憲法草案を発表するまで最低でも7年間は調査、議論を繰り返してきた力作であり、
たちあがれ日本、太陽の党、日本維新の会(石原慎太郎・橋下徹共同代表時代)、次世代の党、日本のこころを大切にする党・日本のこころ、と党の変遷はあるものの「日本の憲法は日本人自らつくる」といった一貫したテーマのもと、これまでに行なった勉強会の回数は3桁を数えています。 現在の憲法の内容を変える「改憲」でも、新しく文章を書き足す「加憲」でもなく、ゼロから自分たちで作る「自主憲法」という位置づけを取っており他党と一線を画しております。
非常に時間と労力をかけ作成されたものでもあるため、ぜひとも皆さまに知ってほしいと思いますし、ぜひお読みいただきたいと思います。本来の日本の憲法はこうあるべきだとの保守陣営の意見が詰まっております。
➡ホームページで「日本のこころ 憲法」と検索してください。憲法草案全てが掲載されております。

▼我が国の基軸である御皇室についてしっかり考え抜かれた憲法を

日本のこころ憲法草案としては、現代的な課題に対応するのみならず、過去を振り返り明治憲法制定過程を研究しております。そのうえで、「日本のこころであり基軸」を体現されている御皇室へ第一に敬意を表し憲法草案を作成したことをぜひご理解賜りたいと思います。

▼明治憲法をつくる際、偉人達はどのように考えたか。

自主憲法草案をつくるにあたってはやはり明治憲法制定の歴史を紐解かねばならないと思います。そもそも伊藤博文は、明治憲法を作るにあたり、ウイーン大学のシュタイン教授に教えを請いに行った際に助言された「憲法とは民族精神の発露であって、自国の歴史や慣習に根ざしたものでなければならない」という言葉を非常に大切に考えておりました。
日本の憲法は何より日本の歴史と文化に根ざしたものでなければならない、憲法起草に関わった伊藤博文はそう思い、以下のような「御皇室」しかないとの言葉を残しております。
「そもそも欧州においては憲法政治の萌せる事千余年、ひとり人民この制度に習熟せるのみならず、また宗教なる者ありて之が機軸を為し、深く人心に浸潤して、人心ここに帰一せり。しかる我が国にあっては宗教なる者其の力微弱にして、一も国家の機軸たるべきものなし。
 仏教は一たび隆盛の勢を張り、上下の人心を繋ぎたるも、今日に至りてはすでに衰退に傾きたり。神道は祖宗の遺訓に基づきこれを祖述するといえども、宗教として人心を帰向せしむるの力に乏し。我が国にあって機軸とすべきは、ひとり皇室あるのみ。」

▼天皇がしろしめす国について
~「知(し)らす」と「領(うしは)く」より~

日本の歴史に根ざした「機軸」とは何であるべきか。伊藤博文がヨーロッパで(憲法の)研究を進めていたのと同時期に、国内に残って古事記や日本書紀など日本とは何か考える人物がいました。それが井上毅(こわし)です。井上は岩倉使節団の一員としてフランス、ドイツを中心に法制の調査を行ったこともあり、明治日本形成期最大の知識人でした。

井上は古事記の中に「知(し)らす」と「領(うしは)く」という二つの異なる統治概念を発見しました(井上毅が著した梧陰存稿の中の「言霊」に思考過程の詳細が記述されています)。それは、古事記に登場し、両者の違いを最も端的に表したのが建御雷神(たけみかづちのかみ)と大国主神(おおくにぬし)との会話「汝がうしはける葦原中国は、我が御子のしらす国である」の一文です。

井上毅の解釈では、「領(うしは)く」とは、国家を私的に領有するという意味で、それに対して「知(し)らす」とは、天皇が鏡のような無私の御心に国民の思いを映し、その安寧を神に祈る、という事でした。国土国民は天皇の私有財産ではなく、その安寧を祈ることが皇室の先祖、天照大神から代々受け継がれてきた使命でありました。

  井上はこれこそが我が国の国家統治の根本理念であるとして、その憲法草案の第一条を「日本帝国は万世一系の天皇の知(し)らす所なり」と定めました。しかし、この近代憲法を世界に知らしめようとした伊藤博文から、「これでは法律用語としていかがなものか。外国からも誤解を招く」との異論が出て、最終的には、「日本帝国ハ萬世一系ノ天皇之(こ)レヲ統治ス」と改められました。しかし、井上は伊藤博文の名で自ら執筆した憲法の解説書『憲法義解』の中で、この「統治ス」は「知(し)らす」の意味であるとはっきり書いています。
今日ではこれを天皇の絶対的専制政治を表すかのように誤解されていますが、それは正しくはありません。天皇はあくまで「国民の安寧の実現を目的とする」という国家統治理念の体現者であり、その理念を国務大臣や議会が行政や立法を通じて実現を図る、というものでした。

前置きが少し長くなりましたが、日本のこころが考える憲法に付与する理念、日本の歴史に根ざした「機軸」とは何か。それは、この「知(し)らす」の理念であり、御皇室のそのものであると言えます。
文中「天皇がしろしめす」となっている部分を「知(し)らす」としたいところですが、法律であることや常用的な言葉の見地から「しろしめす」としておりますが、本来の趣旨としては上記の「知(し)らす」です。 
こういったことを踏まえてぜひ、以下の日本のこころ自主憲法草案の前文を読んでいただけたらと存じます。また今般作成の自主憲法草案では、序章に「日本のかたち」という章を特筆しています。

▼日本のこころ憲法案 前文及び序章

前文
日本国は、古来、天皇がしろしめす国であり、国民は、一人一人を大切にする和の精神をもって、その悠久の歴史を紡いできた。
 日本国民は、四囲を海に囲まれ、四季が織りなす美しい風土の中で、時に自然の厳しさと向き合いながら、自然との共生を重んじ、相手を思いやる文化を育んできた。
 日本国民は、明治維新を経て、衆議を重んじる伝統に加えて、欧米諸国の英知を集めて、大日本帝国憲法を制定し、立憲君主国家を誕生させ、近代国家としての発展を目指してきた。
 先の大戦の後、占領下において制定された日本国憲法の施行以来、七十年が過ぎ、日本をめぐる国際環境は大きく変わり、新たな対応が求められている。日本国民は、ここに新たな時代にふさわしい憲法を制定することを決意した。
 日本国民は、本来日本人が持つ和と公正の精神、人間尊重の原理の上に立って、国家の発展を図り、国民の幸福と利益を増進し、家族を大切にする、明るく温かな社会を建設することを誓う。
 日本国民は、法と正義を基調とする世界平和を希求し、各国間の交流に積極的に力を尽くすとともに、あらゆる力を注いで、世界平和の実現に寄与することを誓う。
 これらの崇高な理想を実現し、将来の世代に引き継ぐ決意を込め、我々国民により、この憲法を制定する。

序章 日本国のかたち
 (日本国の象徴)
第一条 日本国は、天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする立憲君主国家である。
 (国民主権)
第二条 主権は、国民に存する。国民は、その代表を通じて、この憲法の定めるところにより、主権を行使する。
 (人間の尊厳及び幸福追求権)
第三条 すべて国民は、人間としての尊厳を保障される。生命、自由及び幸福を追求する国民の権利は、公共の福祉に反しない限り、最大限尊重されなければならない。  
 (世界平和の実現)
第四条 日本国は、法と正義を基調とする世界平和の実現を国是とする。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守する。
 (国の任務及び国民の責務)
第五条 国は、主権と独立を守り、国内の平穏を維持し、国民の生命及び財産を守らなければならない。
2 国民は、国の独立を守り、公の秩序を維持するよう努めなければならない。
 (歴史、伝統及び文化の尊重)
第六条 国民は、日本の歴史、伝統及び文化を尊重しつつ、文化芸術の振興及び国際交流に努め、豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に貢献する。
 (日本国民の要件) 
第七条 日本国民の要件は、これを法律で定める。
 (日本国の領土) 
第八条 日本国の領土は、日本列島及びその附属島嶼(しょ)である。
 (国旗及び国歌) 
第九条 国旗は日章旗であり、国歌は君が代である。

▼国会法68条の3について
次に壮大な自主憲法制定の話から現実的な話に移ります。
あまりなじみが無い論点かもしれませんが、現在の憲法改正手続きにおいては、国会法第68条の3に「(前条の)憲法改正原案の発議に当たつては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする。」との条文があります。つまり逐条ごとの改正しか出来ない、つまり現行憲法を修正する形でしか変えることが出来ないことになっています。国会の中には、憲法原案について審議する場がなく、憲法全体の改正が不可能となっていることから、自主憲法制定を現実の論点にするのならば、まず第一歩として、国会法の改正(国会法第68条の3の削除)を目指さす必要があります。現行憲法の理念や骨組みそのものを変更する場合、この国会法は今後隠れた論点になってくると思われます。細かな論点かもしれませんが、現行憲法の理念を変更するかどうかの本気度が試される事柄になってきます。

▼安倍首相発言の衝撃

次に自民党による憲法改正の話に移らせていただきたいと思います。
本年5月3日の「第19回公開憲法フォーラム」にて、「2020年を、新しい憲法が施行される年にしたい」と期限を定めた上で、かなり具体的な内容を含んだ発言をしました。
我が国は「数は力」という統治手法に依る民主主義国家であるため、他党の意見を丸のみしてでも変えるといったことが伝わる内容でした。

まず以下、抜粋しているものは、一番争点となりうる憲法9条に係わる安倍首相の発言です。

『例えば、憲法9条です。今日、災害救助を含め、命懸けで、24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く、その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が、今なお存在しています。「自衛隊は、違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任です。
私は、少なくとも、私たちの世代の内に、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきである、と考えます。
もちろん、9条の平和主義の理念については、未来に向けて、しっかりと、堅持していかなければなりません。そこで、「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方、これは、国民的な議論に値するのだろう、と思います。』

 ここで一番の論点となるのは「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という部分です。自身としてもいったいどのような条文になるのだろうと考えるところです。
この方針を踏まえた憲法改正のスケジュールは、自民党内の保岡興治憲法改正推進本部長の動向や言動を見ることが一番わかりやすいのではないかと思います。
まず自民党の憲法調査会で日程的には、6月6日の本部会合で、遅くとも年内をめどに党の改憲案をまとめる方針を示し、具体的な検討項目として、(1)憲法9条の従来の政府解釈を動かさないで自衛隊を憲法に位置付ける(2)高等教育含む教育の無償化(3)緊急事態条項の創設(4)一票の格差・合区解消などの選挙制度の4つを挙げました。
 憲法9条の従来の政府解釈を動かさないで自衛隊を憲法に位置付けるとのことであり、ほぼ首相の発言と一致しています。 

▼公明党の前回衆議院選挙マニフェストを逆手に取る戦略か

9条改正のキーマンとしては、やはり公明党と言わざるを得ません。
公明党憲法調査会長の北側一雄副代表は、3日のNHK番組「憲法記念日特集 施行70年いま憲法を考える」に与野党各党の代表と共に出演し、大要、次のような見解を述べています。(公明党ホームページより抜粋)

【公明党の憲法改正への考え方】
一、憲法は戦後民主主義の進展に大きく寄与してきたという意味で、公明党は高く評価している。特に「国民主権」「基本的人権の尊重」「恒久平和主義」の憲法3原理は普遍であり、今後も堅持する。ただ、制定当時に想定されなかった課題や不備があるならば、憲法の基本は維持しながら付け加える「加憲」という考え方で論議を進めたい。

一、(立憲主義とは)憲法の目的は国家権力から国民の権利や自由を守ることであり、この認識は多くの政党で共通している。必要な改正があるならば議論しようということでも協調している。憲法3原理を堅持することでも、自民党や民進党、われわれも一緒だ。

【平和安全法制】

一、(憲法9条の政府解釈に関して)9条の下で「自衛の措置」がどこまで許されるかは、憲法に明確に書かれていない。政府と国会による長年の憲法解釈の中で確立されてきた。(「必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない」との)1972年(昭和47年)の政府見解が一番まとまっているが、その根幹は今回の解釈でも全く変わっていない。

一、(共産党が平和安全法制を違憲と批判していることについて)そもそも共産党は自衛隊は憲法違反だと言っている。その立場からでは、憲法の解釈について、自衛の措置はどこまで許容できるかという論理とは、全くその前提が違う。

一、(北朝鮮の核・ミサイル問題に関して)朝鮮半島の緊張が高まっている。わが国を巡る安全保障環境は本当に厳しさを増している中、平和安全法制を作ってよかったと実感している。

一、(9条の1項、2項を維持した上で憲法に規定のない)自衛隊の存在と役割を明記すべきとの意見があるが、自衛隊が憲法違反だと言っている国民は極めて少数だ。自衛隊に対する評価は大変高いわけで、今すぐ取り上げるべき問題かどうかは検討の余地がある。

【緊急事態条項】

一、緊急事態時に迅速な対応が必要との観点から、首相に権限を集中させ、また、国民の権利・自由を制約する場合の根拠を設けた方がいいという立場がある。しかし、日本の危機管理法制は法律以下のレベルで相当綿密に書かれている。あえて憲法に規定する必要はない。

一、国会議員の任期延長問題については、危機の時にこそ議会制民主主義が機能していくことが大事だ。多くのハードルはあるが、しっかり憲法審査会で議論していきたい。

【今後の議論の方向性】

一、国会には憲法改正の発議権しかない。最終的には国民投票で決めることになるので、国民の理解を得つつ進めることが大前提だ。次に、できるだけ多くの政党間の合意形成が必要で、特に、野党第1党の民進党の理解を得ながら議論することが大事だ。さらに、これからは優先順位を明確にしないといけない。憲法上、不備があるところを優先して論議すべきだ。
(引用終わり)

重ねて申しますが、結局のところ今回の憲法改正のキーマンは、連立与党の公明党とならざるを得ない部分があります。唐突に出てきたように思える安倍首相の「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」との発言は連立を組む公明党内にある考え方です。
公明党のマニフェスト集の記載を見ればわかるのですが、平成26年衆院選では、「9条1項と2項を堅持した上で、自衛隊の存在を明記することを検討する」としていました。それをそっくりそのまま、安倍首相は「第19回公開憲法フォーラム」で述べたのです。
平成27年の安全保障関連法成立後は「もう9条は変える必要はない」(山口那津男代表)との主張を強めていますが、交渉次第では、安倍首相は同党の理解を得る余地はあるとみているのではないかと思います。
公明党のマニフェスト集に記載のある部分を逆手にとって現実的に憲法改正を進める安倍首相を老獪とみるのか、はたまた公明党に融和しすぎと取るかは各人の判断になります。ただ現実的にこの方針で憲法改正の発議が行われることは基本路線として想定されます。
我々が憲法改正の是非を判断するときがもうすぐそこまで来ています。

2017年06月27日
柳 毅一郎

 

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